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いつもなら反応出来ていたはずだ。
だが、Mr.はいつも優しかったから、油断した。
腕に感じた鋭い痛みに思わず顔を歪めればそれと同時に身体が宙に浮き、地面に叩き付けられる。
刺された時の傷がズキンと痛むのを感じながらもなんとか目を開ければ見慣れた顔の悪魔が居た。
「ベリアル・・・・・・っ、なんで、ここに?」
「今はそれどころじゃないでしょう?まずは完全に敵となってしまったMr.を止める事が先決ですよ」
そう言われMr.の方を見れば、Mr.はまるでゴミを見るような目で俺を静かに見つめていた。
ベリアルは俺を庇うように前に立つと言った。
「この前まで『クロくんは私の物』だとか言ってたくせにフラれた瞬間に殺意を向けるとは、本当に酷い男ですね。彼を貰っても良いんですか?」
「クロくんは混乱しているだけですよ、だから一度殺して目を覚まさせます。とても辛いですがこうでもしなければ元のクロくんに戻せませんから」
「ついに頭がイカれたんですね、シュウ」
シュウ・・・・・・?
「誰が名前を呼んで良いと言った!俺の名前を呼ぶ事を許されてるのは両親とクロだけなんだ!!」
まるで人格が変わったかのように語気を荒らげて叫んだMr.は手袋を口で外して、地面を叩いた。
その瞬間──グラッと地面が揺れる。
するとまるで地面が絨毯にでもなったようにユラユラと揺れるので、俺は反射的にベリアルの服を掴んだ。そしてしっかり顔を見て口を開いた。
「ベリアル、なんとかしろ。次期王なんだろ?」
「了解しました、ダーリン♪」
誰がダーリンだ!殺すぞ、この変態悪魔!!
色々と言いたい事はあったがこんな危機的状況の中で言うこともないかと思い直し、大人しくベリアルの首に手を回せば辺りに眩い光が放たれた。
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