第5章 向けられる敵意

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ん?あれはベリアル・・・・・・と、誰だ? どうやらこれはベリアルの記憶のようで俺の姿はあそこに居る二人には見えていないらしい。 声を発する事は出来ないのだが、動く事は出来るようだ。俺は声を聞こうと静かに耳を傾ける。 「シュウ、こんな所に居たんですか?さぁ、こんな所でうずくまってないで私と共に帰りましょう」 ・・・・・・シュウ? そう言えば、ベリアルはMr.の事をシュウと呼んでいたな。なら彼は地獄に来た頃のMr.と言う事か? 「もう、頼むから死なせてくれ・・・・・・せっかく自殺したのに何で殺してくれないんだ。地獄なら俺を焼き殺すなり、惨殺するなり、してくれないか」 「そう言われても貴方は生きていた頃、交通違反もした事ないでしょう?そんな善良な人間を罪人として扱うのは天界と交わした契約に違反します」 天界との契約を守るなんてベリアルって見た目によらずマトモなんだな。いやマトモではないか。 変な魔法で俺の部屋を壊したんだからな。 「俺が死にたいって言ってるんだ!俺自身が!!」 「・・・・・・そんなに死にたい理由は?」 「生きているのが辛いんだっ、誰も俺を本気で理解しようとしない、誰も人間として見てない、それにこの世界に存在していても俺はずっと一人だ」 Mr.は俺と似たような境遇だったのか? 生きるのが辛い、誰も理解しようとしない、誰も人間として見てくれない。俺も、そうだった。 「いや、一人だけ・・・・・・俺に救いの手を差し出してくれた子が居たんだ。中学生くらいのカッコ良い子で・・・・・・確か名前は黒羽輝。彼だけは違った」 俺?ああ、そう言えば前にMr.は俺の事を恩人だと言っていたな。でも、なんで俺は覚えてない? 「だからそれから少しだけ彼の傍に居たんだ」 「つまりストーカーを?」 「ストーカーなんかじゃない!ただ、彼の腕とかに傷跡があったから心配で・・・・・・もしかしたら不良に絡まれてるんじゃないかと思って見てたんだ」 「典型的なストーカーですね、天国に行けないのはそのせいですか。全く・・・・・・なにしてるんです」 そう言えば中学一年くらいから妙な視線というか妙な感覚を感じていたな、あれがMr.なのか? 対して害もないようだったから気にせずに放っておいたんだがストーカーされてたのか・・・・・・全く気付かなかった。というか、気付くわけがない。 俺は喧嘩ばかりしていたから夜道を歩いていたら刺されそうになった、なんて事は日常茶飯事。 全員を気にしていたらキリがないからな。 「でも、彼の様子が次第に変わって・・・・・・」 俺の様子が、なんだ? 急に声が聞こえなくなってきたな。 「悪・・・・・・ように・・・・・・だから、俺が・・・・・・」 Mr.の言葉にベリアルが驚いたように目を見開く。 それと同時にプツッと視界が真っ暗になった。
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