第5章 向けられる敵意

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「すみません、流石にこれ以上はシュウとの約束があるので見せられません。気になるなら直接彼に聞いてください、私の口からはとてもとても」 苦笑いしながらそう言ったベリアルは再び優雅に紅茶を一口飲むと「美味しい」と言って微笑んだ。 なんか気に食わないが、この腹立つ悪魔のお陰で少しだけMr.の事が分かったのは事実なんだよな。 Mr.は俺と似たような境遇で、俺と同じように人を嫌っていて、でも人を嫌っている、自分が何倍も嫌いで孤独という状況を心の底から怖がっている。 ・・・・・・まぁ、俺はストーカーではないが。 「黒羽さん、シュウは、ストーカーで変態で独占欲強めのイカれた人間ではありますが、悪魔である私が見ても悲惨としか言いようがない人生を過ごしてきているんです。今にも暴走しかけてる彼を止められるのは同じ境遇の貴方だけ──だから、彼を、シュウを無理やりにでも止めてください」 それは紅茶を飲みながらする頼みごとではないと思ったが、綺麗な金色の髪の隙間から見える耳はほんのりと赤くなっていて俺は苦笑いを零した。 頼み事をするだけだというのに・・・・・・なんでそんなに照れてるんだ。全く、素直じゃない奴だな。 「ああ、任せてくれ、ベリアル」 「無理だったら構いませんよ、殺しますから」 「お前は優しい悪魔なんだな」 「・・・・・・殺しますよ」 そんなに耳を真っ赤にさせながら殺害予告をされても全く怖くない。むしろ、面白く感じるな。 そう思いながら俺は静かに口角を上げた。
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