第6章 現れた黒幕

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俺は今、デートしている。 十歳の小さな女の子と。 「クロ!あそこにいってみたい!いくぞ!!」 「えー・・・・・・面倒臭い。一人で行けよ、地獄の街(ヘル・タウン)に居る奴らは良い奴だから平気って言ってるだろ」 「護衛のくせに文句を言うな!!」 そう言うなり子供とは思えない力で腕を引かれて俺は溜息をつきながら、アリスの後ろを歩く。 半壊した部屋を元通りにするには一日かかるとの事で街をフラつく事にしたのは良いが、なぜだかアリスに見つかって、デートを申し込まれた。 正確には無理やりデートさせられているんだが。 子供の好奇心とは尽きないもので、アリスは特に食べ物を食べ歩いては「美味い!」と言っている。 今食べているのはあからさまに不味そうな紫色の天ぷら?みたいなものだ。臭いは特にしてない。 「クロ、ほら口を開けろ!」 「俺は遠慮する」 「食べないとヨバイするからな!!」 誰から聞いたんだ、その言葉。 流石に夜這いされるのは嫌だと思って口を開けてやればアリスは俺の口に紫色の天ぷらを入れた。 「ど、どうだ?」 ホクホクで、見た目がグロめの物体。 その味は・・・・・・ 「サツマイモみたいな味だな、サツマイモの天ぷらとかに少しだけ味が似ているような気がする」 「サツマイモ?」 「ああ、地獄にはないのか。えーっと、まぁ、この天ぷらと似たような味の・・・・・・凄く美味いやつだ」 「いつか食べてみたいぞ!」 「なら知り合いに聞いておこう」 「やったー!!!」 子供らしくはしゃぐその姿を見ているとなんだか癒されてしまって、ついさっきまで重かった体が軽くなる。全く・・・・・・体っていうのは単純だな。 こんな子供一人の笑顔で軽くなるなんて。 「アリス、俺と居て楽しいか?」 「き、急になんなんだ?まぁ、楽しいのか、楽しくないかと言われれば・・・・・・その、楽しい、と思う」 「そうか、ありがとな」 俺と居て楽しい、と口に出して言ってくれたのはお前が初めてだと言えばアリスはどんな顔をするだろうか。やっぱり驚いたような顔をするか? いや、きっと悲しそうな顔をするだろうな。 似た境遇の俺に同情するはず。 「それにお前と居ればご飯がタダだ!」 「タダじゃないぞ。ちゃんと街の奴らが困ってたりした時に助けてやるのが条件になっているんだよ」 まぁ、嘘だけどな。 「ふぅん、そのくらいならいつでも大歓迎だ!」 機嫌が良いのかスキップをしながら元気良く声をあげるアリスの髪をくしゃくしゃと撫でてやる。 生きていた頃はまるで本物の悪魔を見ているかのように怯えられていたからな・・・・・・妙な感じだ。 俺は笑いながらアリスの手を握り締めた。
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