第6章 現れた黒幕

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整った顔を顰めて、やけに真剣な声色で問われて俺は少し固まった後で「Mr.から」と答えた。 するとベリアルは大きく舌打ちすると近くの壁に八つ当たりするように叩いた。せっかく元通りにしてもらった家が台無しだと思っていれば、 「思っていたよりもMr.は重症ですね、貴方を我が物にする為にこんな薄汚い魔法を使うなんて」 「・・・・・・どういう事だ?」 「そのネックレスは別名『悪魔の所有物』と呼ばれ悪魔でさえ使いたがらない代物です。というよりこれは魔王城で厳重に封印されていた物ですよ」 何でそんな物を俺につけるんだ? 私にまだ好意を向けていた時にくれたネックレスなんだぞ?それにそういう類の物は着けると不幸になると言うが、何も不幸な事は起きてない。 「このネックレスは着けた本人に降り掛かる不幸を吸い取ってくれる物です。例えば交通事故などの事故から救ってくれたりするお守りに近い物」 「なら良い物じゃないか」 「・・・・・・これは不幸を吸い取ると同時に着けている人物の色々な記憶をゆっくりゆっくり蝕んでく」 俺が生きていた頃の記憶が曖昧なのもこのネックレスのせいだというのか?さっきの変な記憶も? 「貰った時に何か言われませんでした?」 「あっ・・・・・・えっと、、『このネックレスは貴方を守ってくれます、全ての嫌なものから貴方を遠ざけてくれるお守りです』って言われて渡された」 「はあ・・・・・・仮にも知り合いなので私に対する無礼などを許してきましたが流石にコレはダメです」 ベリアルが大きく溜息をついてパチンパチンッと指を鳴らせば、どこからか本のような物を現れて彼は慣れた手付きでページを捲って、息を吐く。 そして綺麗な声で言葉を紡ぎ出した。 「窃盗罪及び上位悪魔侮辱罪、その他の罪を犯したとしてシュウこと今坂秀一(いまさかしゅういち)を捕まえる事を命じます。傷付けるのは構いませんが殺すのは駄目です、生きて私の目の前へ連れて来なさい──私が自らシュウをこの手で斬り殺してさしあげます」 「「「了解しました、ベリアル様!」」」 どこからか声が聞こえてきたかと思えば本は宙に浮くとパンッと軽快な音を立てて姿を消した。 そうか、いつもの変態発言とハイスペックな見た目のせいで忘れていたがコイツは仮にも結構凄い立場の悪魔だったな。本当にすっかり忘れてた。 「クロ!大変だ・・・・・・って、ベリアル様!?!?」 まるでスライディングをするように土下座をして入って来た悪魔にベリアルは柔らかく微笑んだ。 「顔を上げなさい、どうしたんです?」 悪魔はゆっくり顔を上げて話し出した。 「は、はい、実はその・・・・・・少し前にここにやって来たアリスという少女が妙な男に誘われまして」 「は?誰にだ!!」 「カラスの仮面の男だ。取り返そうとはしたんだが変な魔術をかけられて街の奴らがいきなり人格が変わったみたいに暴れ出したから無理だった」 すまない、と本当に申し訳なさそうに謝る悪魔に何も言えなくなり俺は急いで部屋を出て行った。
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