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ベリアルに連れて来られたのはアリスを見つけた場所である森で、Mr.は血に濡れたナイフを持って地面に倒れているアリスを静かに見下ろしてた。
「ッ、Mr.!何をやった!!」
「ああ、クロくん。丁度良かった、この子のお陰で私の間違いに気付くことが出来たんですよ!」
本当に嬉しそうな声色で言ってくるMr.に俺は怒りとも、悲しみ、とも言えぬ感情を胸に抱きながらMr.に近付いていって目の前で立ち止まった。
あの時のような強い殺気は感じない。
いつもの柔らかく甘い雰囲気だ。
「クロくん、大丈夫ですか?どこか体調でも──」
俺は胸に着けていたネックレスを首から外す。
そして驚いたように固まっているMr.の手にネックレスを置いて「・・・・・・もう返す」とだけ伝えた。
「き、気に入らなかったんですか?これが好きではないのなら新しいのを手に入れます、どれが、」
「無理だ」
「えっ?」
「もう、Mr.を、信じる事が出来ないんだ」
だから受け取る事はできない。
そう言って俺は地面に倒れているアリスに急いで駆け寄りホッと息を吐く。まだ少し息があった。
刺された箇所は俺と同じようだからすぐに手当てすれば数日で治るはず・・・・・・でも、今は脇腹から出ている血を少しでも止めることが先決だ。
「アリス、この前話しただろ?ほら、サツマイモを食ってみたいってお前は言ってたじゃないか」
「い、ったから、なんなのだ?」
「今ここで死んだら食べられないぞ。ホクホクしていて凄い美味いサツマイモ、それでも良いのか?」
痛そうにしながらも首を横に振るアリスに笑みを浮かべてやれば「・・・・・・変な笑い方」と言われた。
とりあえず無事で良かったと安堵していればアリスが後ろを指さした。なんだ、と声を出す暇さえ与える事もなく俺は数メートル先に飛ばされた。
地面に背中を打ち付けた衝撃のせいか喉の奥から声にならない声が零れて、首を乱暴に掴まれる。
目を開ければそこには、
「・・・・・・またベリアルに言われたんですか?」
殺気に満ち溢れたMr.の姿があった。
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