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「あの悪魔は嘘つきなんですよ?生まれてから一度たりとも本音を話した事がない、大嘘つき!!」
グッとMr.が俺の首を締める手に力を込めた。
腹の底から湧き上がってくるような怒りに任せて自分が出せる力でMr.を俺の上から退かせる。
「じゃあ、Mr.は違うのか?俺に一度も嘘をついた事がないとそう断言する事ができるのか??」
「それは・・・・・・」
「できないだろ?実際嘘をついていたんだからな」
地獄に来てすっかり忘れてしまっていた。
良い奴ばかりに囲まれていたせいだろう。
だから『意志を持つ全ての生き物は嘘をつく』という俺にとっては大事な事をすっかり忘れてた。
俺の周りに寄ってくる女は顔目当てか遊び半分で俺の周りに寄ってくる男は俺をからかう為か騙す為に決まっている。悪魔だってきっと同じだ。
「俺が喜ぶからとか、俺が悲しむからとか、いつもMr.は言っていたよな。ああ、俺の為とかも言っていたか?いつも口を開けば俺の事ばかりだった」
ベリアルの言う通り執着していた。
でも、Mr.が執着してたのは俺じゃなくて、
「Mr.は自分の考えや行動の言い訳として利用する事が出来るから俺に酷く執着しているんだ」
「私はそんな事・・・・・・」
「赤い川での事を覚えてるか?」
悪魔殺しがあったと聞いて俺が駆け付けた場所。
だが川は既に片付けられていて帰ろうかと思っていた時に人間──まぁ、罪人の男に殴られた。
その時にMr.が来てその男を残酷とも言える方法で殺したんだ。そしてその時に言ったMr.の言葉、
『クロくん、優しい貴方の代わりに私が殺してあげましたよ。どうです、嬉しいでしょう?』
・・・・・・この時もMr.は『俺』が望んでいたから男を殺したと言わんばかりの言い方をしていた。
Mr.が悪魔殺しの犯人だと分かった時も、
『悪魔殺しなんて・・・・・・まるで私が連続殺人犯のような言い方をしますね。私はただ、貴方の事を悪く言う悪魔達を罰しているだけなんですよ?』
ほら、この時だってそうだ。
俺は何も頼んでいないのに勝手に犯罪行為に手を染め、その理由を勝手に俺に結び付けてるだけ。
「Mr.は俺を利用して自分の犯罪行為を正当化しようとしてるだけだろ、そして利用する事が出来る俺に執着している──そうなんだろ、Mr.?」
「私は、ただっ、本気で・・・・・・」
「俺を一番傷付けてるのは他でもないMr.だ」
「っ、私が、クロくんを?いや、私は、クロくんを守ろうとしてただけで、それに他意なんて・・・・・・」
「──二度と俺に近付かないでくれ」
俺はアリスを抱えてMr.の横を通り過ぎて行った。
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