第6章 現れた黒幕

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「・・・・・・本当にアレで良かったのか?」 Mr.から見えない位置の木の影に隠れて俺は盛大な溜息をつきながら隣に居るベリアルを睨んだ。 ベリアルは珍しく心底楽しそうに口を三日月形に曲げながら「完璧ですよ」と嬉々とした声で言って俺の髪を撫でてくる。罪悪感がとんでもない。 「めちゃくちゃ、ショック受けてないか?やっぱり言い過ぎだったんだ・・・・・・やっぱりお前の作戦に乗るなんて言っていた少し前の自分を呪いたい」 「Mr.の裏に居る本当の悪役を知りたいなら、まず彼を精神的に追い詰めなければ始まりませんよ」 ここに来る途中でベリアルは言ったのだ。 Mr.は誰かに操られてるだけだ、と。 俺への好意を利用して犯罪行為に手を染めるようそそのかしているラスボスが居るとのこと。 俺の家も誰かに監視をされているようだったからMr.をわざわざ指名手配したらしい。 まず俺やベリアルの知っているMr.は俺が頼んでもいないのに犯罪行為に手を染めるほど勇気のある性格ではない。まぁ、言うならば臆病なのだ。 そしてMr.は悪魔でも半悪魔でもないのだからベリアルの使うような魔法が使えるはずがない。 つまり誰かがMr.に色々な魔法を授けた事になる。 決定打となったのはあのネックレスだ。 ベリアルが言ったようにあのネックレスは魔王城にて厳重に保管されている物。触れるのは三王と呼ばれている魔王を含めた三人の王だけらしい。 一人目がこの地獄を支配している悪魔。 『憤怒』のルシファー。 二人目がルシファーの右腕と言われる悪魔。 『暴食』のベルゼブブ。 三人目が性欲の塊とも呼ばれている悪魔。 『色欲』のアスモデウス。 だが彼らが自ら進んでMr.と関わる事はしないとの事らしい。つまりこの三人の誰かの部下が勝手に持ち出したらしいが一人一人は調べられない。 ・・・・・・だからわざとMr.を傷付けた。 そうすればMr.の弱った心につけこもうと彼を背後から操っていた悪魔の正体が分かるという作戦。 心の中も読まれているかもしれないからと言われ考える事も変えた。まぁ、演技は得意だからな。 「!誰か来ます、私の手を握ってください」 何の意味があるか知らないが従っておくか。 そう思い俺はベリアルの手を握った。
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