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しばらくすると本当に誰かがやって来た。
真っ黒なローブを着ているソイツはMr.の背後から近付いて、耳元で何かを囁いてるようだった。
誰なんだ?前にベリアルが『ベル』と呼んでいた悪魔もローブを着てたが灰色だった。それに雰囲気が違う、ベルという悪魔は威圧が凄かった。
「真っ黒なローブにこの悪臭。そして右腕に巻いている毒蛇・・・・・・間違いなくアスタロトですね」
「知り合いなのか?」
「ベルの部下ですよ、怠惰の代表と言って良いほど面倒くさがりなので今回の件には関わってないと思っていましたが意外なラスボスが来ましたね」
ん?待て、ちょっと待て。
「ベリアル、もしかして、だが・・・・・・お前が言っている『ベル』ってベルゼブブの事なのか?」
「あれ、言ってませんでした?」
聞いてない。だってこんな変態悪魔がベルと呼ぶ奴が三王の一人だなんて誰が考えるんだよ。
なら俺が前会った灰色のローブを着ていた悪魔はベルゼブブだったのか?だからあんなに威圧感というかオーラがとんでもなく強かったんだな。
宗教に興味がない俺だって知ってる有名な悪魔。
「アスタロトはベルの腹心・・・・・・怠惰ですが、頭は良いですし、身体能力も良い。まず殺す事は無理なので弱らせてから牢屋に入れる方法にします」
「俺は何をすれば良い?」
「とりあえずは私の補佐をしてください、今すぐにアスタロトを倒す事は不可能なので準備します」
「Mr.は、どうするんだ?」
作戦の為とはいえあんな事を言って、多分、凄く傷付いているはずだ。心の声を聞いてたら尚更。
いつだってMr.は俺の為に行動してくれた。
俺が孤独なのを嫌いと知っていてか、毎日遊びに来て話してくれた。赤い川の時だって、あの罪人が俺を傷付けていたから殺したんだ。
悪魔殺しを始めたのも純粋に俺を楽しませようとしてくれたからだろう。やり方はダメだったが。
「Mr.は悪獣になったりしないよな?」
前にベリアルから聞いた悪獣。
悪獣は負の感情が溜まった時になる化け物で悪獣になった者は命尽きるまで暴れ回るものだ。
「・・・・・・大丈夫ですよ、きっと。シュウは今までも負の感情に呑まれそうになっていましたけどいつだって貴方の事を思って堪えていたんですから」
「そ、うか」
「だからそんな顔をしないでください。とりあえずラスボスが分かっただけで大収穫なんですから」
そっと髪を撫でられて俺は深呼吸をした。
そうだ、Mr.を誰かが操っていたと分かっただけで凄い事なんだ。後はあのアスタロトという悪魔が犯人という事を確定させる証拠を見つけるだけ。
だから待っていてくれ──Mr.。
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