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落ち着け、落ち着け、俺。
ここで怖がったら話も出来ないだろうが。
「貴殿は我に恐怖を抱いているか?」
低く、少し落ち着いた、声が聞こえる。
「それはもちろんだ。出来る事ならこの場から逃げ出したいくらいには、お前を怖がっているぞ」
もっと言うなら震えるくらい怖い。
「・・・・・・ならば何故、逃げない?」
「大事な頼み事があるからだ」
「どういった類の頼みだ、申してみろ」
「──アスタロトを倒す手伝いをしてほしい」
瞬間、ふわっ、と風が頬を通り過ぎる。
目を開けて俺は思わず息を飲んだ。
目の前・・・・・・いや、あと、一息でも吐けば顔面に当たるくらいの凄い近距離に大きな爪があった。
こいつ、殺す気だったのか?いや、俺が嘘をついたら殺す気だったんだろう・・・・・・マジで、怖い。
「理由を言ってみよ」
少し爪先を離してマルコシアスが言った。
「友達がそいつに操られている、俺はアスタロトを倒したい。もしくは交渉をしたい、その為にお前の所に来てみた──モリーさんにすすめられて」
「モリーさん、とは、ゴモリー様の事か?」
「あ、ああ、そうだが・・・・・・知り合いなのか?」
そう言えばマルコシアスから大量の煙らしき物が辺りに散乱する。俺がゴホゴホ咳き込んでいれば消えていく煙の中から一人の大男が現れた。
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