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やり返しても意味は無い。
家族に迷惑かけるだけ。
それならアイツらが飽きるまでひたすら俺が何もせずに居れば良い、俺はそんな風に考えた。
まぁ、要するに面倒だったからしなかった。
「・・・・・・貴殿は変な男だな」
「そうか?」
「優しいかと思えば冷たくなったり、冷静なのかと思えば感情的に動き、真面目だと思ってれば急に面倒くさがる。まるで多重人格の者のようにコロコロと性格が変わるが、その根底には酷い自己、」
「──マルコ、それ以上は止めろ。詮索するな」
俺は冷え切った声でそう告げた。
「貴殿が望むならそうするが、自分の事を理解し、受け入れ、そして救ってやれ。他人を救うにはまずは自分自身を救わなければ意味がないぞ」
もう、手遅れだ。俺に俺は救ってやれない。
昔の俺はあの時から顔を見せない、厳重に鎖のかかった部屋に閉じこもり、自分自身を酷く嫌っていて、何度も何度も死のうとしたイカれてる俺。
そんな人格は必要ないだろ?自殺志願者の悪魔はもう居ない。今の俺は家族が望んだ完璧な俺。
優しくて、真面目で、人助けをする。
家族は──世間はそんな俺を望んでいるんだ。
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