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「なんだ、誰も居ねぇじゃん!せっかくアスタロト様に土産持っていこうとしたのに・・・・・・あ〜あ、めんどくせぇ!もう良いや、今日はさっさ帰ろっ!」
──バタン!
苛立ちをぶつけるように乱暴に扉が閉められる。
気配がなくなった事を確認してホッと安堵の息を吐いてから俺は「ありがとな」と礼を言った。
「貴殿は危なっかしすぎるのだ、我は呼ばれるならいつでも飛んでくる。故にいつでも呼ぶと良い」
「本当に助かった──マルコ」
人間バージョンのマルコにそう言えば少し驚いたような顔をした後で、ふん、と目を逸らす。
そう、さっき、俺の肩を掴んだのはマルコで俺を部屋のクローゼットに連れ込んだ。そして人間の臭いをかき消す為にこうやって抱き締められた。
俺の危機をなんとなく察したらしい。
「それにしても、さっきは物凄い悪臭がしてたのにアスタロトは来なかったな。あれは部下なのか?」
「ああ、あれでも雑魚の方だ」
マジか・・・・・・あれより強い奴が居るのか?
クローゼットから出たのは良いが安堵したせいか力が抜けてしまい、マルコに抱きとめられた。
「悪い、俺・・・・・・」
「気絶しなかっただけで凄い方だ、力が入るまでは好きなだけこうしてろ。我は貴殿より力持ちだ」
「ん、助かる、本当に良い奴だな」
そう言ってチュッと頬にキスしてやればしばらく固まった後で顔を真っ赤にして黙り込んだ。
ああ、もしかして、マルコはピュアなのか?
Mrやベリアルはキスをねだってくるから悪魔達は挨拶でキスするのかと思ってたが・・・・・・マルコは違うようだ。真面目でピュアな良い悪魔だな。
そんな事を思いながら心の中で微笑んだ。
──数分後にベリアルが来て大惨事になるなんてこの時の俺は、全くもって、考えていなかった。
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