第9章 最後のデート

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『その魔法は貴方が言うように他人の記憶を移した物で本来の記憶ではありません。誰がやったかは分かりませんし、どこまでが他人の記憶なのかも私には分かりませんが、もしかしたら貴方の性格そのものが他人の性格なのかもしれませんね』 ・・・・・・俺の記憶はどこまでが本当なんだ? 優しい両親、元気な妹。 あの家族が居たから俺は今まで生きてきてたはずなのに、それが偽の記憶なら、俺はどういう風に生きてきてたんだ?生きたい、と思ったのか? 体中にある怪我から考えるに俺が悪魔と呼ばれて嫌われていた事は確かだ。なら悪魔関連の記憶は本物という事になるが、それ以外の記憶は不明。 「そう言えばMrは俺の事を恩人だと言って慕っていたんだよな?そしてストーカー・・・・・・熱狂的なファンだったなら死んだ理由も知ってるかもな?」 いや、でも、Mrは今は居ない。 ベリアルによって指名手配されているし、何よりあんな酷い事を言っておいて、今更利用する事はできない。そこまで俺は落ちぶれていないはず。 だが死んだ理由は気になる・・・・・・自殺か、他殺かくらい知りたい。まぁ、前者の可能性が高いが。 「クロくん」 「ッ!?」 背後から急に抱き締められ身体が跳ねる。 なんなんだ、最近はビックリする事があまりにも多すぎて心臓が有り得なくバクバクなんだが!? ・・・・・・ていうかMrの声だったよな。 俺の後ろに居るのか? 「明日一日だけ私とデートしてくれませんか?」 「はっ?」 また、唐突だな。 「デートしてくれなかったら寝ている間に撮ってた貴方の寝顔写真をばらまいてしまいますよ」 「拒否権ないじゃないか」 「・・・・・・断って良いですよ。私が貴方の写真をばら撒くなんて事をしないの知っているでしょう?」 こつんと肩にMrの頭が乗せられる。 今はいつもの仮面をつけていないようだ。 振り向いて顔を見てみたいが、そんな事をすればMrは二度と来てくれないような気がして俺は銀に染まっている寝癖つきの髪の毛をそっと撫でる。 「さぁな、ばら撒かれるの嫌だから特別に明日一日くらいなら付き合う。でも、Mrは指名手配されているんだから変装なりなんなりしてくれよな?」 「私や貴方の事を知らない街があるんです、そこで宿をとりましょう。きっと楽しくなりますから」 「明日迎えに来てくれよ」 「──もちろんです」 そう言ってMrは消えていった。
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