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「ビックリしましたか?」
そこには面白そうに喉を震わせながら笑っているMrの姿があり、思わず大きな溜息をついた。
すっかり忘れてしまっていた。
Mrはかなりの悪戯好きだったな。
首に当てられたのはジュースらしく、俺はそれを受け取って苦笑いをする。こういう所は前とあんまり変わってないな、少し子供っぽくて陽気だ。
「・・・・・・誰かと話してました?」
「ああ、知り合いとな。お前がこのカチューシャを付けてろって言ったせいでからかわれたんだぞ」
「可愛いじゃないですか、お似合いですよ」
高校生の男に可愛いはないだろう。
それに自分で言うのもなんだが俺は「怖い」という顔付きをしているはずなのに、何でMrは「可愛い」なんて言うんだ?俺が女にでも見えてるのか?
楽しそうに笑うMrに何度目かの溜息を零しながら俺は受け取ったジュースを飲んで目を見開く。
「トマトジュース・・・・・・何で俺の好みを?」
「好きな人の好みを把握しておくのは当然では?」
「あ、ああ、そうだな。 ありがとう」
忘れていた。
こいつ俺のストーカーだったな。
地獄に来てからは分からないが少なくとも生きている頃の俺の行動や好物は把握されているのか。
「なぁ、Mrには家族居ないのか?」
「・・・・・・居ますよ、弟が一人だけ」
えっ、弟? Mrに?
「愛嬌があって、人気者で、いつも私の心配をしてくれていた私には勿体ないくらいに優しい弟」
「両親は?」
「物心つく前に捨てられたらしいので知りません」
「あっ・・・・・・悪かった」
「気にしなくて結構ですよ。 そのお陰で私はこうやってクロくんに出会えたんですから、幸せです」
そう言いながら、手を握られ、俺も握り返す。
そして次は食べ物屋へと向かった。
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