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11ー4。
3セット目はあっさりと奪われた。
セット間、ベンチに戻ってきた龍平を部員全員で取り囲む。
龍平は監督である顧問教諭のアドバイスに、幾度もうなずいた。拓真は汗ばんだ龍平のゼッケンを持ち上げ、背中をうちわで扇いだ。
「拓真」コートに戻るとき、龍平は言った。「あの廣田ってやつまじでつえー。サーブとか全然わかんねえ」
言葉とは裏腹に、龍平の目はいたずらをする子どものふうに輝いて見えた。団体戦の準決勝だというのに、ずいぶん楽しげだ。
そうだ、こいつはこういうやつだった。拓真はあきれて苦笑した。
「とか言っておいて、普通に返せてたけどな」
さきのセット、拓真のおぼえているかぎり、龍平にレシーブミスはなかった。たしか1セット目、2セット目は二、三本のレシーブミスをしていたから、龍平はきちんと修正してきたのだろう。
「なぁなんかない? 良さげなとこ」
良い作戦はないかと龍平は訊いているのだ。おもわず拓真は「はぁ?」と顔をしかめた。
仮に得策があったとしても、ベンチアドバイザーとして監督がベンチにいるのだから、いち選手がメンタル面ならともかく、技術的な助言をあまり口にするものではない。拓真は顧問のほうをちらりと見、
「ない。あったとしても先生といっしょだ」
「んだよ、つかえねぇ」
龍平はにやりと笑って、コートに向かった。人をからかうときにきまってのぞかせる、見慣れた表情だった。
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