14人が本棚に入れています
本棚に追加
廣田がサーブをミスしたのは、この試合中ではじめてだった。龍平はセットポイントを得た。
「岡、しめるぞォ!」
芦田野ベンチからキャプテンが叫んだ。
このセットを龍平が穫れば2対2。試合は最終セットへともつれこむこととなる。
拓真は息をのんだ。ベンチとコートはニメートルほどしか離れていない。だが実際の距離以上に拓真には遠く感じた。
廣田がトスをあげると同時に、龍平はステップを踏んでタイミングをあわせる。フォアよりにきた短いサーブを、フリックで廣田のミドルへ返球した。合わせぎみに廣田は龍平フォアへドライブする。龍平はそれをストレートコースにカウンタードライブで攻めると、次の打球をわかっていたかのようにバックサイドに回り込み――強烈なフォアハンドドライブを決める。力強いガッツポーズが飛び出る。
「11ー9(イレブン・ナイン)」
とたん芦田野ベンチと観覧席の芦田野サイドがわいた。興奮でほとんど雄叫びとなった声援を送りながら、拓真は両こぶしを天に突き上げた。
試合に出たい。団体メンバーとして。
衝動のままに叫んだあとは、まるで自分がコートについてプレーしたかのように息が苦しかった。
最初のコメントを投稿しよう!