戦争について思うことあれこれ

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戦争について思うことあれこれ

  ロシアのウクライナに対する行いは戦争犯罪である。  許されざる人道に対する罪である。  非難されるべき非倫理的行いである。  そりゃあそうなんだが、この種のコトバを政府機関が発するのは情報戦、プロパガンダの類なのであって、本気で言ってると思うのはよほど純真な人だ。  たとえばアメリカはイラクで何をしたか、アフガンで何をしたか。思い出してほしい。記憶にないほど若い人はグアンタナモで検索してみてもいい。  歴史をさかのぼれば、加害者になったことが一度もない国など一握りしかあるまい。例えばポーランドはヨーロッパのいじめられっ子であったが、14世紀から16世紀には強大国であり、この頃ロシアに恨まれても仕方のないことをやっている。  戦争犯罪、と言う言葉の偽善性に、特に日本人は敏感であるべきだろうと思う。  戦争犯罪というなら、どの国際法のどの条項に違反したのか、はっきりさせてもらいたいものだ。そしてそれを理由に自己正当化するのでなく、法と正義の問題ならそれらしく、国際裁判所で決着をつけてもらいたいものだ。    アメリカの基準に照らすなら、アメリカも何度も戦争犯罪を行っている。彼らが罪に問われないのは、彼らが「我々」の味方であり、「我々」は彼らに東京裁判やニュルンベルク裁判を強制するつもりもその力もないからに他ならない。  偽善的なのはプーチンだけではないし、バイデンだけでもない。偽善に基づく秩序の上で安全と安定を享受している、我々すべてが偽善者だ。    国際社会に法にもとづく秩序などなく、その場その時の都合が存在するにすぎない。  それを踏まえたうえでの戦争批判でなければ、我々は何度でも同じ間違いを繰り返すだろう。  付言するなら、想像できることだと思うが、経済制裁でも人は死ぬ。市民の財産が失われ、生活は不可逆的に破壊される。制裁と戦争は同一直線状にある。これもまた、日本人なら知っているはずのことである。      
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