書かない人たちはいつも

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書かない人たちはいつも

 書き手にもいろんな人がいるだろうが、自分は誰にでも小説を書いていることを言い、あいさつ代わりに「試しにこれ読んでみてよ」と言う。   別にそのあと「どうだった? ねえ、面白かった? ねえ?」などとつきまとったりはしないので、迷惑がられてはいないと思う。ものを書いているという話をしてまず最初に返ってくる反応はだいたい、「ああ、やっぱりねえ」である。やはり見るからに奇人なのであろう。  で、「長年書いてきたけど、去年初めて賞金をもらったよ」と言うと、全員が同じ言葉を返す。 「才能あるんだねえ」である。  実はこのセリフは嬉しくない。  変な言い方だが、才能のある奴らと一緒にしてほしくないのである。  どんなジャンルでもそうなのだろうが、努力を誉められることはあまりない。 「あの人は才能があるから」と片付けてしまうのは、まあ、いろいろ無難なのだろう。  死ぬ間際の最後の一瞬でもいい。「頑張ったね」と一言言って欲しいと思う。  努力したことを褒められたら、俺はきっと泣く。    まあ、現実には、誰にも知られずに一人で死ぬ。  この道を歩こうと決めたときから、その覚悟はしているのだけれど。     
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