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「うわああぁぁああーー!!!」
歩は、叫び声を挙げ布団から飛び起きる。
全身を汗でびっしょりと濡らしながらも"いつも"と変わらない部屋の風景を見て、"夢"だと分かりほっと胸を撫で下ろした。
まだ夜中なのか、部屋の中は暗闇に包まれている。 感情が昂っていて、暗闇だと色々と夢で見た光景を思い出してしまうのを危惧した歩は、部屋の明かりを付ける。
「おばあ生きてる……?」
部屋に明かりが灯ると、部屋の中が鮮明に露わになる。
6畳ある畳みの上に歩の布団の横にもう一つ布団敷いていて、その布団には寝息の音をほとんど立てずに"祖母"が眠りについてる。
部屋の中は、時計の秒針のチクタク音だけが鳴り、ほぼ静寂に包まれている。 歩は祖母の事を"おばあ"と呼んでいて、おばあの寝ている姿を見て一抹の不安が頭を過ぎる。
(良かった……。 ちゃんと"生きてる")
あまりにも、おばあの静寂な寝方は"棺"に入った両親の姿を彷彿させた。 すぐに歩はおばあの首に手を当て、脈動しているかを確認する。
(ほんまに紛らわしいって……)
死に敏感な歩は、おばあの紛らわしい寝方に少しを腹を立てながらもその反面は、息をしている事を確認でき安心している。
いつのまにか、昂った感情が収まっていた事に気づいた歩はおばあに感謝しながら、布団に入り再び眠りにつこうとする。
暗闇を嫌がった歩は、部屋の明かりをつけたまま布団へと身体を収めた。
(寝るのが怖い……)
歩は再び眠りにつく事によって、再度"悪夢"を見てしまうのではないかと恐怖し、目を閉じるのすらも怖けついている。
気持ちが完全に落ち着くまで、歩は枕元にあるスマートフォンを操作する事で頭の中の考えから悪夢を遠ざけた。
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