悪夢

5/36

48人が本棚に入れています
本棚に追加
/180ページ
そうこうしている内に、食卓には次々と食事が運ばれてくる。 「今日も多いなぁ〜〜」 おばあが作る朝ご飯の量はいつも多く、そして、和洋折衷の境界線がなかった。 煮魚とオムライスといった、凄く合わない組み合わせの献立を普通に出してくる。 今日は昨日の"店"の残りで出た、牡蠣フライに豚キムチに出し巻き卵に白ご飯。 汁物は、いつもみそ汁が顔を連ねている。 お茶碗の中の白飯が空になると、すぐにご飯をおかわりさせようとしてくる、おばあとの必死な攻防を繰り広げながらも、歩は朝食を完食する。 (なんで毎日、こんなに飯食ってんのに背伸びへんのかなぁ……) と歩は成長期真っ只中にしては、上背が165センチと低い事を悩んでいた。 そんな、考えてもどうしようもない事をテレビに視線をやりながら、ぼーっと考えていると、テーブルに置いていたスマホからLIMEの通知が鳴る。 「あ、もうこんな時間か! おばあ! 行ってくるわー!」 「はーい。 行ってらっしゃい。 勉強頑張っておいでやー」 とおばあから台所で見送られ「はいはい」と軽く返事をし、急いで制服に袖を通し玄関へと向かう。 「おばあー! 帰りに何か買ってくるもん、あるーー?!」 「……。」 はっ、と何かを思い出した歩は、靴を履きながら台所を向き、耳が遠いおばあに聞こえるように声を大きく張ったが、おばあに届いていないのか返事はなかった。 「あれでも聞こえてないんかい…! まあ、ええや。 何かあったら電話してくるやろ」 歩はそう自己完結し、棚に置いてある自転車の鍵を取ると、慌しく家を出て行った。
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加