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人生最後の日と新しい世界へ
今までの人生を振り返ると、
やっぱりあの子のことを思い出してしまう。
あの夏の日、ひまわり畑にただずむ、
栗毛色の髪をしたあの子のことを。
たった一度、二度と戻れないあの日。
今日と同じく、とても暑くて
でも、ひまわりは綺麗に咲いていて
空には輝く太陽と大きくて真っ白な入道雲
どこからか聞こえる蝉の声と
まるで世界には自分しかいないような
そんな不思議な感覚にのみこまれていた。
僕は虫取りあみをもち
麦わら帽子をかぶり
夏草の上を一人歩いていた。
ただひたすらに暑く
意識が朦朧とする中
ふと、ひまわり畑の方を見た。
そこには栗毛色の髪をした少女の姿が見えた。
僕は声をかけることもできず
少女がゆっくりとひまわり畑の中で
美しく踊る姿を見ることしかできなかった。
白いワンピースが揺れ
夏の空とひまわり畑の景色とその子が
ただとても美しいと思った。
僕は、あまりの暑さに意識を失っていた。
目が覚めた時には日陰にいた。
あの子は今どこにいるのだろう。
生きているのかな。
それとも幻だったのかな。
僕は砂の大地を踏みしめ
あの日のことを振り返る。
今日はたぶん僕の人生最後の日だ。
どこまでも続く広い空と
これから地球の全てを燃やしてしまうであろう
あの真っ赤な太陽。
ああ、人生最後の日は本当に暑いな。
そうね。
そう呟く彼女の声が聞こえた気がした。
僕は祈りを捧げた。
どうかまた、あの子と会えますようにと。
意識が朦朧とする。
地球は異常なほど熱していた。
環境の変化に対応できなかった生物は
あっという間に絶滅の危機に追い込まれた。
僕たち人類もその生物の中の一つだった。
暑さにより砂漠化が急速に進み
食糧はなくなり人々の争いが増え
多くの人々が亡くなってしまった。
僕の家族も、もう誰も生きていない。
僕は数少ない人類の生き残りの一人だ。
本当に一人になってしまった。
家族が残してくれた食糧と水もつき
生きるために僕は歩き出した。
でも、もう限界だった。
僕の足は動こうとしない。
荒廃した世界の中
砂漠の真ん中で座り込んだ。
あの夏と似ているようで
全てが違っていた。
僕の乾燥した肌に涙がこぼれた。
服はボロボロ
体は酷く痩せ細って
それでも、やっぱり生きたかった。
諦めたくなかった。
だけど、僕はあの子に会いたいと思ってしまった。
僕は砂漠の真ん中に倒れた。
あの日とは景色は違う。
だけど同じ感覚がした。
涙を滲め、
どこまでも続く砂漠と少し日が沈み出した空
僕はやっぱり美しいと思った。
自然は偉大で
地球に生まれてきた奇跡
人間として生まれ
感情をもち生きることができた素晴らしさ
ただただ感謝することしかできなかった。
すると、あの子が現れた。
白色のワンピースに栗毛色の髪
何も変わっていなかった。
彼女は優しく微笑み僕の頭を撫でてくれた。
そして手を差しのべてくれた。
僕は体が軽かった。
あぁ、これでみんなと会えるんだ。
そんな気がした。
僕は手をひかれ、
新しい世界へと向かった。
例え彼女が天使でも悪魔でも、幻でもいい。
彼女が違う星の宇宙人だとしても構わない。
僕には人間として地球で生きてきた思い出がある。
僕は彼女と一緒に空へと続く階段を登った。
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