僕らは支配された鎖

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「こちらは、廃品回収車です。ご家庭でご不要になりました廃品を回収致します。生きていても構いません。お気軽にご相談ください」 無機質なその声が、アイがこの場所で聞いた最後の声だった。 意識を失ったアイは、男と共に車に乗せられ、この場所を離れていった。 アイは夢を見た。 土を掘る。 廃品たちを埋めるための穴を一人の少年が掘っていた。 その穴の中に少年も入り、炎が燃え上がった。 何度叫んでもアイの声は届かなかった。 場面は変わって、膝を抱えてアイは廃墟ビルで泣いていた。 空にはうっすらと細い線をえがく月が浮かんでいた。 新月に近いその月は、まるでアイの欠けた心のようだった。 「アイ」 その声にアイは顔をあげる。 そこには穏やかに微笑むシュウと、仲間たちの姿があった。 「シュウ……!」 アイは立ち上がり、シュウの両頬を包むとその感触を確かめる。 その手をとって、シュウはやさしくアイの額に口づけを落とした。 唇をきゅっと結び、アイはシュウに抱きつくと、いとおしそうに何度もその名を呼んだ。
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