僕らは支配された鎖

12/12
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「アイ。俺たちが宿した炎は消えない。大丈夫」 「みんなっ……みんないなくなった! 私のせいで!」 「アイのせいじゃない。大丈夫。俺たちはみんな、未来を信じている」 そう言って、シュウをはじめとした仲間たちが腕をあげ、手の甲をぶつけあった。 その光景をみて、アイは精一杯口角を上げて笑い、自身の腕をあげ、拳を空に突き付けた。 「未来はある。そうだろ、アイ?」 「うんっ……。夢なんかで終わらせない。私たちは人よ。廃品になるのが未来じゃない」 アイが笑うと、みんなも穏やかに笑い、そして背を向けて建物の外へと出ていく。 いつのまにかシュウもアイから離れ、穏やかに笑ってアイに背を向け、歩き出していた。 その後ろ姿を、アイは追いかけなかった。 誰もいなくなった廃墟ビルで、アイは再び空を見た。 月は丸く輝き、黄金に輝いていた。 ——それから何十年も経って、この国の奴隷制度は崩壊した。 制度が崩壊すると同時に、廃品回収法も廃法となり、歴史に名前を残すだけのものとなった。 街を行き交っていた廃品回収車は姿を消し、誰もが平等という言葉のもとに生きる国となっていった。 この国の英雄となった一人の男がいた。 ”人”として生まれながらも、”廃品”と呼ばれ、育った子だった。 ”人”と”奴隷”の間に生まれた子だったそうだ。 男は後に語る。 母から聞いた、散っていった仲間たちの生き様を。 ——空を見上げると、満月が浮かんでいた。 かつて廃品回収されたものたちが埋められた大地に、女は立つ。 その瞳に映る月はどこまでも蒼く、美しく輝いているのであった。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!