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「アイ。俺たちが宿した炎は消えない。大丈夫」
「みんなっ……みんないなくなった! 私のせいで!」
「アイのせいじゃない。大丈夫。俺たちはみんな、未来を信じている」
そう言って、シュウをはじめとした仲間たちが腕をあげ、手の甲をぶつけあった。
その光景をみて、アイは精一杯口角を上げて笑い、自身の腕をあげ、拳を空に突き付けた。
「未来はある。そうだろ、アイ?」
「うんっ……。夢なんかで終わらせない。私たちは人よ。廃品になるのが未来じゃない」
アイが笑うと、みんなも穏やかに笑い、そして背を向けて建物の外へと出ていく。
いつのまにかシュウもアイから離れ、穏やかに笑ってアイに背を向け、歩き出していた。
その後ろ姿を、アイは追いかけなかった。
誰もいなくなった廃墟ビルで、アイは再び空を見た。
月は丸く輝き、黄金に輝いていた。
——それから何十年も経って、この国の奴隷制度は崩壊した。
制度が崩壊すると同時に、廃品回収法も廃法となり、歴史に名前を残すだけのものとなった。
街を行き交っていた廃品回収車は姿を消し、誰もが平等という言葉のもとに生きる国となっていった。
この国の英雄となった一人の男がいた。
”人”として生まれながらも、”廃品”と呼ばれ、育った子だった。
”人”と”奴隷”の間に生まれた子だったそうだ。
男は後に語る。
母から聞いた、散っていった仲間たちの生き様を。
——空を見上げると、満月が浮かんでいた。
かつて廃品回収されたものたちが埋められた大地に、女は立つ。
その瞳に映る月はどこまでも蒼く、美しく輝いているのであった。
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