哀しみの聖母

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 ウィズリー校は名門とはいえ、五学年千三百名の十代男子が集まれば、良くも悪くも異端児が存在する。学校側で処理しなければならない大問題を引き起こす悪質な生徒は別だが、些細な規則破りに対しては、監督生の裁量で諭したり懲罰を科さなければならない。監督生の権力が強大だった時代には、度を越した懲罰が私刑的側面を持ち、傷害事件として学校の内外で取り沙汰されたこともあったらしい。  さすがに昨今ではそういった事例はないが、それでも監督生は職務に必要なだけの力を有している。鞭で手を打つ程度の懲罰はジェイムズの時代にも日常茶飯事だったことを、『館』創設以来の悪童として名を馳せてきたジェイムズとその悪友は身を以って知っている。そんなジェイムズ達を一度も鞭打つことなく、声を荒げることもなく、ひたすら諭した唯一の監督生がレジナルドだった。 「まったくもう、君達につける薬はないようだね」  哀しげにため息をつく様は、良家の子息ばかりとはいえ結局のところはむさ苦しい男の園で、奇跡的に貴重な一服の清涼剤。
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