844人が本棚に入れています
本棚に追加
哀しみの聖母
ロンドン郊外に広大な敷地を擁するウィズリー校は、英国でも一、二の名声を集める、古い歴史を持つパブリックスクールである。
創立は十五世紀。その優雅な制服は、百年前の国王の葬儀に参列した時の喪服そのままの意匠を引き継いでおり、黒の燕尾服を翻し大勢の生徒たちが広い構内を闊歩する光景は、壮観の一言だ。
元々は、優秀だが貧しい少年を、王を知識と教養で支える従者として養成する目的で設立されたが、今は王侯貴族の子息の教育機関の側面が強い。もちろん平民の生徒もおり、ウィズリーは学力ですべての序列が決まる実力主義を取っているため、優秀であれば爵位の上下有無など関係ない。貴族の子息に生まれ使用人に囲まれて育った者には、親から離れ従者もおらず、狭い個室で自分で自分の面倒を見なければならない寄宿生活は、勉学以前に厳しい環境と言える。
毛並みの良い優秀な生徒ばかりを集めたウィズリー校でも、特に優れた生徒だけにその資格が与えられるのが『王の学徒』だ。
最初のコメントを投稿しよう!