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授業料・寮費が免除される他にもいくつかの特権を与えられる彼らは、校内の羨望を一身に集める少数の選良集団である。毎年行われる選抜試験をくぐり抜け、その名誉に与るのはほんの一握り、全校生徒の五%にも満たない。特別に構内の『館』に住むことを許され、『王の学徒』のみが与えられる黒の外衣を翻して式典に参加する。それは、ウィズリーで学ぶ者なら誰もが夢見る、栄光を凝縮した光景だ。
寄宿学校といっても、寮のすべてが構内に建っている訳ではない。『王の学徒』以外の生徒は、ウィズリーの街中にある寮に生活基盤があり、それゆえに校外寄宿生と呼ばれる。彼らは毎朝寮から通学し、課外活動以降の時間を所属する寮で過ごす。厳しい寮則と寮長に監視されてはいるが、物理的に学校から隔たった空間は、『館』に比べれば気安い雰囲気と自治の気風に満ちていた。
罪深いまでにつまらない学科などにまったく興味はなかったが、馬鹿呼ばわりされるのは我慢ならずそれなりに勉学に手をつけてしまい、結果的にウィズリーでの五年間を『館』で過ごすことになったジェイムズは不幸だった。
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