君への手紙

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親愛なる君へ 君がいなくなってもうすぐ一年。 月日は本当に早いものです。 君がいなくなってからも、 私は相変わらず自分のことで精一杯で、 君が死んだと知った時はもちろん泣いたけど、 それからは思ったより悲しくありません。 自分でも驚いています。 君がいなくなる前は、君が死んでしまうと考えるだけであんなに悲しかったのに。 君が私たちのところへ来たとき、 私はすぐに君のことが好きになりました。 可愛い立ち耳、美しい栗毛色の毛並み、 丸くて大きな瞳、 小さな体で一生懸命生きていて、 外で遊ぶのが大好きで、 怖がりなくせに少し怒りっぽくて、 食いしん坊で、 ぬいぐるみと散歩が大好きで、 写真を撮る時は、しっかりカメラ目線で 純粋で優しくって どんなところも 私は君が本当に大好きです。 その気持ちはきっと これからもずっと変わりません。 君との思い出を振り返ると本当に温かくて、 懐かしくて優しい気持ちになります。 辛いときや悲しいとき、 私の心を支えてくれたのはいつも君でした。 君は年をとるにつれて私たちのことを忘れていきました。 目も見えなくなり 方向が分からず壁にぶつかったり 夜に悲しく泣くようになりました。 君が亡くなる少し前 毎日苦しそうに咳き込んでいて それでも一生懸命立ち上がり  痛みに耐えながらも家の中を歩き回り 夜の静寂の中響く君の咳きが 本当に苦しそうで 私は君を思うことしかできず 君の名前を呼んだり そうしても、やっぱり苦しそうで 辛くて 自分の無力さを感じました。 君が痙攣を起こすと 私はパニックになり 君のことは家族に任せ その場を離れ 少しだけ心を落ち着かせることもありました。 今思うと君が苦しんでいる姿に 目をそらしてしまっていたのだと思います。 私は何にもできなくて ただじっと見守ることもできず 君を思っては泣くことしかできませんでした。 そのあと痙攣止めの薬を貰っても 病は確実に君を蝕み 私は君が生き続けるのを見るのが辛くて それでも君は生きる道を選び 命がつきる最後の瞬間まで 君は歩いていたと聞きました。 家族が最後に君の名前を呼び、 君は記憶を失っているはずだけど 一生懸命反応してくれたと聞きました。 8月29日、あの日、あの夕刻のとき 私は友達と少し遠くへ出掛けていました。 楽しくてしかたがなく、 いつもより遅くまで遊んでいました。 家族は普通に私を出迎え いつもと変わらず私に早く風呂へ入れと急かし 私はその後もその日の思い出をペラペラと話していました。 しかし、何となく家族が何かを隠しているような そんな気がして 私は、ふと、君のことを聞きました。 私は君がよくいる場所に 箱が置いてあるのを見ました。 もしかしてと思い、家族に問いただし 急いでその箱を開けると 君の体は固くなり 静かに眠っていました。 体は保冷剤で冷やされ、目はとじられていました。 栗毛色の毛並みは柔らかく だけど全く動かない 死んでしまった君の姿を実際に目の前にして 君が本当に死んでしまったという事実を知りました。 家族は、私が感情が高ぶると どうなってしまうか分からなかったため 君が死んだことを私に伝えるのを拒んでいたのです。 私は一晩中泣きました。 その次の日も泣きました。 8月31日。君の火葬をしました。 火葬前、君に手紙を書きました。 そして、君の好きなお菓子や花を飾り 君を見送りました。 火葬場。火葬炉に君が向かう瞬間。 私は本当に君の姿がこの世からいなくなって もう二度と会うことができないんだ。 そう考えると、とても悲しくなり 涙が溢れてしまいました。 君の骨は細く 例え骨になってしまっても やっぱり君らしいなと思いました。 君がいなくなって、もうすぐ1年。 君の弟は相変わらず食いしん坊で だけど時々、君に似ている子を見ると 少し懐かしそうにしています。 私も無意識に君の面影を探してしまいます。 だけど、やっぱり、君は君です。 昔の写真を眺めて 君の写真が多く残っていたことが 私の心の支えです。 君の写真は、明るくお日様みたいに 色づいています。 いつ見ても懐かしく笑顔になれます。 君と過ごした日々は私にとって、 太陽みたいに温かい思い出です。 私はあの日、 家族で唯一君を見送ることができませんでした。 私は君に謝りたい。 だけど家族はあえて君は私に死ぬところを 見せなかったのかもしれない そんなことを言っていました。 君はいつも、みんなを元気にさせてくれて 見守ってくれていました。 私は君にお礼を言いたい。 君との思い出は生涯忘れません。 本当にありがとう。大好きだよ。 天国でも君が幸せであることを祈ります。 また会える日まで。少しだけさよなら。 生まれてきてくれて、うちにきてくれて ありがとう。 2020年 8月25日                君の家族より
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