鬼女

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鬼女

 それから溝山さおりは、大人の目がないときに私に攻撃をしてきた。  校内の角っこで待ち構えられて、足を引っ掛けられ、転倒させられる。  ものを盗まれる。  ないことないこと言いふらされる。  聞こえるように、仲間の唐田や小出と共に、 「園部山キモい」 「うざい」 「消えろ」 「学校くんな」 「なんで生きてんの?」 「タヒね」  などと悪口を言っていた。  更にはいきなり後ろから、お尻を蹴られたこともある。  びっくりして振り向くと、溝山が震えるような身体ですごい形相をしていた。  たぶんやろうと思えばやり返せたし、私の方が力は強かったが、やり返すと 「園部山が障害のある溝山さんに危害を加えた」  なんて話になることが、目に見えていた。  私はやり返すことも、文句を言うことも、なんにもできず、黙って耐えた。  …お尻がいつまでも、痛かった。  制服のスカートが、少し汚れた。  惨めだった。  あの時の溝山の鬼のような醜く歪んだ形相は、一生忘れられない。  溝山は、悪魔だ。化け物だ。  障害者というものを盾にして、誰かを攻撃する卑怯者だ。
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