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1.彼女は違う国から
───名賀南区民プールは朝からごった返していた。
監視台の小さな屋根では、この焼けつくような陽射しを抑えきれない。
「あっちぃ、今日いったい何度あんだよ」
僕は、手のひらで日光を遮りながら愚痴をこぼしていた。その指の間から、見慣れぬ光を見た。
対岸のプールサイドで小麦色に焼けた女性が伸びをうっていた。同じく黄色いLIFE GUARDの文字が入ったTシャツを着ている。肩に届かないくらいの飴色の髪が、水面から反射した光に輝いている。
昨日、あんな人いたっけ?
ぽかんと口を開けて見ていると、女性は目線に気づいて、にこ、と笑った。
どんな顔を返せばよいか分からないでいるうちに、子供が奇声をあげてプールに飛び込んだ。
「ピピー! 飛び込みだめだよー!」
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