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バタ足の練習をする親子が、バレーボールを楽しむ四人組の真ん中を突っ切っていく。小学生たちは、これでもかと真っ黒に日焼けした顔をくしゃくしゃにしながら、追いかけっこをしている。
区民プールの監視員ほど楽なバイトはない。僕は高校時代の部活仲間にそう教わって、この夏、このバイトを始めた。
確かに、時折飛び込むいたずらっ子を除けば、監視するまでもない。事故など起きそうもない気配。暑いのさえ耐えれば、まあ、おいしいバイトかもしれない。
ふと、僕は対岸に目を向けた。
先ほどの彼女が、小さな女の子たちと水かけっこをしている。
おそらく年は上だ。でも、プールサイドで顔を煌めかせて遊ぶその笑顔は、幼くも見えて。水飛沫を浴びるその姿は、まるで太陽が降りてきたようで。
その人に目を奪われていた。夏がよく似合う人だな。見つめながら、そんなことを思った。
ばっしゃーん!
「ピピー! 飛び込むなっての!」
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