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プロローグ
信じられないって顔してるね
夕陽が彼女を包む。ふふ、と笑う彼女は、慣れたふうにそう言った。
そりゃあ、ね
それくらいしか、答えようがなかった。
彼女とは仲良くなり始めたばかりだ。ふわふわとした、甘く酸っぱい恋とやらに、少し足を踏み入れたばかりだ。
信じる信じないとかではなくて、ただただ、嘘であって欲しいと願うばかりだった。
「ふふ。こんな病気、あたししか罹ってないんじゃないかな。だから、嘘だと思ってくれていいよ?」
小麦色に焼けた彼女の笑顔は、あと一ヶ月もすると見られなくなるらしい。
信じられない、と思いたい。
嘘だ、と思いたい。
でも、彼女は嘘をつくような人じゃない。そんな気が、するから。
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