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何処へ
じゅんと両親は、予約していたレストランで、須田を待っていた。もう、着いていることを、メールしたが、返事は来なかった。
外は、吹雪始め、窓から見える景色は、一面、真っ白な銀世界だった。
テーブルのランプの灯りが、心細そうに揺れていた。
「もしかしたら、こんな、天候じゃ、羽田からの飛行機も飛ばないかもしれないな。」
父親が、窓の外を覗き込んだ。
「約束の時間から、一時間半は、過ぎてしまってるから、お店の方にも、申し訳ないですし、お食事、始めましょうか?」
母親が、じゅんの様子を気にかけながら、優しく微笑んだ。
正月に入ってから、今の今まで、須田からの連絡はなかった。じゅんからも、電話をすれば良かったのだろうが、家族団欒のところに、自分みたいな、厄介者が連絡をすることに、かなり躊躇があり、出来なかった。
「じゅん。俺、正月に話すから、家族にお前のこと。いい?」
「良太は、本当に伝えたのだろうか。。。」もし、そうであれば、反応を知りたかったが、大抵の予測は着いていた。それよりも、家族から反対された後の、彼の気持ちが知りたかった。「変わらずにあるものってあるのかな。良太が変わらなければ、それで、充分だ。もしそうで、あれば、僕は迷うことなく、、、」
食事が終わり、その後、一時間程待ったが、須田の来る気配はなかった。
「そろそろ、私達は、ホテルに戻るよ。明日の早い便で立つからね。」
「じゅんは、もう少し、良太さん、待っているの?」
両親のじゅんを見る眼差しは、心配と温かさが入り交じったものだった。
「飛行機が遅れてるようだから、もう少し、待つよ。」
じゅんは、テーブルに携帯電話をパタッと置いて、両親を見た。
「じゃあ、元気でな。アメリカにも、遊びに来なさい。たまには、日本から出ることも、視野を広げるためには、必要だよ。」
「はい。」
そう言うと、両親は、呼んでおいたタクシーでホテルへ戻って行った。
じゅんは、それから、閉店まで、待ったが、ついに、須田は、現れなかった。
「お客様、タクシー、お呼びになりますか?」
「大丈夫です。ありがとうございます。」
「でも。お客様、外はかなりの雪が。。。」
じゅんは、店員の心配をよそに、扉を開くと、粉雪舞う、白銀の世界へ出て行った。
「良太。。。」
小さな声で呟くと、白い雪を蹴飛ばして歩いた。
会いたい。会いたくない。会いたい。
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