君と僕の物語

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今日は助けてくれて本当にありがとうございました。 お身体大丈夫でしょうか。 もし何かありましたらすぐにご連絡くださいね。 明日もここにおります。          司書補 松村 陽  流れるような美しい字の書かれた栞を半分に折ったメモ。  慌てて彼女を追いかけた。  もうすぐ正門を出てしまうところだった案外と歩くのが速い彼女に追いついて肩を叩くと。  驚きビクンと肩をすくめて、ゆっくりとこちらに振り向いた。  僕は彼女に『ありがとう』を伝える。  数年ぶりにするその手話はきっとたどたどしいものでわかりづらいものかもしれないけれど。 『ありがとう! いただきます』  僕のジェスチャーに驚いてそれから目を輝かせて微笑んだ。  僕が手話が話せると踏んだのか返事を手話で返そうとする彼女に、待ってと右の掌を彼女に向け制止してスマホを出す。  メモ帳を開いて。 ――僕は手話がそんなに得意でもないのでスマホでもいい?  と打ち込んで彼女に見せると、うんうんと頷いて彼女もスマホを出して。 ――今日はありがとう、痛いところはないですか?  その気遣いに首を横に振って。 ――高いところは危険だから、もし次に高いところで仕事があって僕が側にいたら遠慮なく声をかけて。僕は結城 彼方(ゆうき かなた)と申します。この大学の3年です。  覗き込んでいた松村さんは頷きながら笑っていて。 ――知ってます、学生証で。同じ誕生日だからビックリしちゃって、覚えてます。だって生まれ年まで同じ人、今まで会ったことなくて。  え?! ――10月10日?  彼女は楽しそうに微笑んだ。  365分の1の奇跡? いや生まれた年まで入れたらかなりの確率じゃないか?  その偶然が嬉しくて笑みが零れてたのだろう、彼女は僕を見て笑ったから。  恥ずかしくてすぐに口元を引き締めたというのに。 ――何か、嬉しいですよね。  そんな素直な言葉をかけられたら、また緩んでしまう。
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