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 私のロボットは完璧だった。  料理、洗濯、掃除とあらゆる家事をこなす。買い物だって道順と購入物を登録さえすれば勝手に行ってくれるし、割引シールを判別して価格をできるだけ抑えてくれるという気の回しようだ。  会話だってお手の物で、適当に話しかけても気の利いた返しをしてくれる。 「トーマ、何か面白いこと言って」 「会話で一番返事に困るセリフランキング1位が『何か面白いこと言って』というのはご存じですか。会話の流れも何もない中で相手が面白いと感じる話をするのは非常に困難ですし、そのハードルの上がった空気で話し手も緊張してしまうからです。ちなみにそのセリフを多用する人の友達は少ない、という統計が取られています」 「うるさい」    そして見た目もイケメンだ。長身塩顔の清潔感男子。好みのタイプど真ん中。  『ロボットの外見にこだわった』というコピーを打ち出すブランドだけはある。見た目はほとんど人間と変わらない。  まるで理想の彼氏と同棲している気分だ。給料4ヶ月分とボーナス1回分をつぎ込んだが、私はまったく後悔していなかった。  そんな顧客満足度の高い、私の完璧なロボットだが。  ただ1点だけ小さなバグがあった。 「トーマ、オムライスを作って」  私が夕飯のリクエストをすると。  トーマは私好みに設定された低音域の声で答える。 「はい、嫌です。マスター」
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