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「時と場合によります。貴方は対人関係が希薄ですから、相手の心を汲み取ることができないのですよー。まあ、それが尚のこと、残虐さに磨きをかけているのですけれどねー」
「そんなこと言われたって……」
「そうです、ブラッド。確認ですが、貴方、ペットが欲しいのですかー? 万が一、古代竜を連れ帰る者があったら、どうするつもりですー?」
「えっ……古代竜は、困るな……ペットにするなら、こう、小さくて懐きやすくて飼いやすい、可愛らしいものが良い」
「わかりました。他の者が貴方の言を信じ込んでおかしな真似をせぬよう、釘を刺しておきますよ。一人、やりかねない者がおりますからね。魔力に頼らず、古代竜を連れ帰りかねません」
「う……自ら魔の森に? 俺なら嫌だな……入ったが最後、魔力を根こそぎ吸い取られて、生息する生物に狙われたりするんだろう……運良く生き延びても古代竜に出くわしたら、一巻の終わり……ああ、お化けとか出てきたらどうしよう。暗いし、きっとああいうところには出るよな……」
ぶつぶつ呟き、一人の世界に入ったブラッド。見慣れた光景に、長身の男は呆れて溜息を吐いた。
「また、お得意の妄想ですかー? 本当に、想像力が豊かでいらっしゃいますねー。幽霊なんて非現実的なもの、いるわけがないでしょう。それとも貴方、見たことでもあるのですかー?」
言いながら、ベッドに腰掛けるグラン。緩い癖のある髪が揺れた。
ブラッドは彼の態度には目もくれず、「だって」と必死に口を開く。
「いないなんて証明ができるか? 誰か見たことがあるから、『お化け』とか『幽霊』って概念が存在するんだろ?」
「あー、はいはい。そうかもしれませんねー」
「お前な……そうやって馬鹿にしてると、幽霊に襲われるんだからな!」
「わかりましたよ。肝に銘じておきます。本当に、次から次へと……空想がお好きですねー。……まあ、そのおかげで暴虐魔王になってしまわれたのですけれど」
ブラッドの、誰にも言えない秘密――暴虐魔王と崇められる彼だが、言動のすべてが演技であること。本心は、気弱で幽霊が怖い小心者だ。
魔王として立派に君臨すべく、ブラッドは本心を隠していた。周りの目を気にする性格から、期待に応えようと理想の魔王像を作り上げて演じる――結果、誰もが恐怖し、畏れる魔王が出来上がった。
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