【7・Summer holidays 終わっても】

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「パソコン操作なんて使用人がやればいいことで、こっちは結果だけ見聞きすればよい。  だいたい、ちまちま小さなボタンを押すのなんて貧乏くさい」   というのが理由だ。―――貧乏くさいか?  この隠れた仕事は、バァーバには内緒で、休業日にお店をこそっと使ってやろうと決めた。  あのバァーバだったら、「他人さまのためになるんなら」と、諸手をあげて賛成してくれたかもしれない。―――けど、やっぱり内緒。  腕時計に目をやると―――、 「さあ、そんなにのんびりしていられませんよ。  あっ、今日土曜か!? 生クリームイチゴサンド、売り切れちゃうかも! あれ一番人気だから!」  彼女の腕を離すと、私は走りだした。 「あ~、待ちなさいよイク~っ!」  御萌さんも駆けだした。けど、すかさず転んだ。 「ブー子!」という呼び方が、いつしか「イク!」になっていた。  なんだか御萌さんからは、「ブー子!」って呼ばれていたほうが心地よかったかも……。  彼女に手を貸して立ちあがらせた。 「どうしてはじめての女の子の友だち、私にしようと?」  ヴィンテージデニムの膝についた汚れを(はた)いてやっていると、ずっと秘めていた疑問がなぜかふと、喉もとまでせりあがってきた。  しかし、 「あたしのほうが速い~っ!」  いきなり子どものように彼女が駆けだしたので、その言葉は日の目を見なかった。 「生クリームイチゴサンド、あたしが全部買う~!」  得意げな声が流れてきた。 「べつに……いっか」  私のそれは、買い占められることに対してのつぶやきではなくて……。  私はすぐに彼女を追い越した。  ―――世の中には知らなくていいこと、知る必要もないこと、たくさんあるから。 「こら~! ちょっとまて~!」  背中から聞こえる声に、 「生クリームイチゴサンド、私が全部買う~!」  彼女よりも得意げに答えた。                                 〈了〉
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