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「いえ、そんな私、受けとれません! 全然……ではありませんけど、たいしてお役に立ちませんでしたし、お店もこんなにしてしまって」
「まぁ~、なんという奥ゆかしい方なんでしょ~!」
バァーバはまた感激して、
「いいお友だちを見つけたわね、ヨッチャマ」
微笑んだ。
御萌さんもまた顔を赤らめ、うつむいた。
それでもどうすべきか迷っている私を横目で見て、
「とっときなさいって」
彼女は小切手をつかんで、私の平べったい胸に押しつけた。
「まあ、ヨッチャマったら、おほほほほ」
口にハンカチを添え、バァーバは品よく笑った。
仕方がないので、「ではありがたく頂戴します」と、私も丁寧に頭をさげて小切手をポケットにしまおうとした―――けどその前に、
えええ~っ!?
思わず叫びそうになった。―――書かれている金額が目に入ったから。
以前、《呪い解き》を手伝えば、家庭教師の三倍のバイト料が入ると御萌さんは豪語した。でもそこに記してあった数字は、三倍どころの騒ぎではなかった。
「ねえバァーバ、どうかしら? ぶさいくさん、このお店でアルバイトとして雇ったら」
「えっ!?」
「彼女、この仕事してたらとっても面白くなったんですって。それで自分なりに骨董の勉強なんてしちゃったりして。だから働きたいんですって、とりあえず大学にいる間」
また嘘ぶっこいた。
「ほんとぉ~!?」
驚きの顔と声が私に向けられた。
嘘です、大嘘です! でも……バイト探しているのは、本当です。―――だから頷いた。
「あらぁ~うれしぃ~! ヨッチャマのお友だちなら、もちろん大歓迎よぉ~!」
綺麗な手を組み合わせてバァーバは喜んだ。細く長い指も御萌さんと似ている。
「あたしも……手伝おうかしら。骨董、ちょっと面白くなったから」
御萌さんがすまして割り込んだ。そっぽを向きながらだったけど。
「ほんと!?」
「……うん」
「ヨッチャマが一緒にお仕事してくれるなんて、バァーバうれしぃ~!」
彼女はまた顔を袂で隠した。―――よく感激するおばあちゃん。
でも御萌さん、骨董なんてまったく興味ないんじゃなかったの?
―――もしかしてまさか、まだ《呪い解き》続ける気じゃ……。
そんな疑いを顔いっぱいに表して彼女を見た。
そこには、口笛でも吹きだしそうなとぼけた横顔があるだけだった。
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