【1・私はWhy?】

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 だったらべつに、英語の本でなくてもいいと思われるかもしれない。でも日本の本には、頻繁に「ブス」だとか「醜女(しこめ)」だとか「化け物」などという単語が登場し(私だけの感覚かもしれないけど)、楽しむ時間のはずが、精神的苦痛を受けるそれに変化してしまうからだ。  精神的苦痛―――ということは、  そう、私はブスなのだ。  しかもただのブスではない。  糸のように細い目に、手入れをしても翌日にはすっかり茂っている極太眉。ブタのようなあがり鼻に、三回塗ったら新品の口紅でもなくなってしまうほどのタラコ唇。その奥にひそむ歯は、すべて常人よりサイズが大きい。加えておまんじゅうのようなまんまる顔に、田舎者まるだしの真っ赤な頬。  自他共に認めるブス。  史上最強のブス。  クイーン・オブ・ブス。  ピカソでも描けないブス。  そう―――ドブスっ!。  そして当然、そんな容姿の自分に自信など持てるはずもないから、必然的に内向的になり、暗くなり、友人もできづらい。いや、今までひとりもできなかった。  でも、人間でひしめき合っている東京に出てくれば、友だちのひとりやふたり!  そんな思いを、白菊に受かったとき抱いたことは事実。  しかし、世の中そううまくはいかないことを、都会は教えてくれた。  入学当初、一年生のまわりにいるのは、はじめて逢う新鮮な顔ぶればかり。自ずと友だちづくりがはじまる。内気な私も、このチャンスを逃してはなるまい! と自身を鼓舞し、クラスメイトに溶け込もうとした。  でも……。  私の顔を見るなり、笑いだす者、あっけにとられる者、無視する者、そして怒りだす者までが続出。  やはり生半可ではなかった自分のブサイクさを、再認識させられた。  それでも中にニ三人、私ほどではないにしろ同類はいた。  彼女たちとはなんとかコミュニケーションが成立したけど、ほどなくそれも風化していった。  基本的に、ブスは自分よりブサイクな子を連れたがるもの。そうすれば当然、自分の醜貌度が緩み、ひとりのときよりも男子の目を惹きつけられる可能性が、多少なりともあがるから。  しかし、その連れが度を越したブサイクだと、逆に男子は寄ってこない。そんなデメリットに、彼女たちは気がついたのかもしれない。
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