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もちろん、これもあくまで評判であり、その美しさに対するジェラシーが原因となっているのだろけど。
もしくは逆に、「あんたたちとは人間的レベルが違うのよ」と、彼女のほうからシャッターをおろしているのかもしれない。
「知ってるんだったら問題ないでしょ! 鍵渡しなさいよ!」
頭だけではなく、御萌さんは右腕も窓口の中に突っ込んだ。
「だからど~してできないのよ!?……えっ!?……許可書!? そんなもん要らないでしょ! 借りるのはあたしよ、あたしっ!」
どうやらなにかを借りたいらしい。―――でも、事務室からいったいなにを?
「夏休みの間だけっていってるじゃない! どうせ使わないんだからいいでしょ!?」
事務員も踏ん張っているみたいだけど、その答弁はまったく聞こえない。
「あんたまさか、意地悪してそんなこといってるんじゃないでしょうね!? あんたのひとりやふたり、くびにするのなんて屁でもないんだからねっ!?」
あんたのひとりやふたりって……どういう意味? しかもあんな美人が「屁」だなんて。
「あっ、わかった! あんたが個人的に使うんでしょ!? 変なことに!」
変なこと?
「男連れ込んで、いちゃつこ~って魂胆ね! ホテル代浮かすために! クーラーもついててちょうどいい広さだものね~!」
「しません、そんなこと」
この事務員の台詞は届いてきた。よっぽど強く否定したかったんだろう。
「どうだかね~、最近の若いもんはなにするかわからないから~」
窓口から腕を抜くと、自分も若いもんの彼女は、偉そうにあごをあげた。
―――大学内のなにかの施設を借りようとしているらしい。
それにしても、どうして事務員がそんなことするって発想になるんだろ? いつも男子たちをはべらかせている彼女自身が思われるならともかく。
でも、この彼女の態度と口ぶりから、
「極悪の性格」
との評判があたっているのか定かではないけど、
「極めてきつい性格」
ということは事実のようだ。
「まったく話にならないわねぇ!」
腕組みをした彼女は、唾でも吐き捨てるような勢いでこちらに顔をそむけた。
その拍子に、
やばいっ!……目、合っちゃった!
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