矢田くんとの遭遇。

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 彼がまだ大丈夫ではなさそうだと言うことは分かったが、知り合いでもない生徒、ましてや異性にそれ以上話しかける気は起きなかった。  さて、本の続きを優雅に読もうと思った私だが、あることを思い出した。先ほど、私は後ろから声をかけられて驚いてしまったことを。  その声は確か男の子の声で、後ろに蹲っていたのも男の子だった。  つまり、彼は私に声をかけたらめっちゃ驚かれて、さらには椅子から飛び上がったモノだから椅子の足でも当たって足を痛めたのだろう。多分、だけど。ぶつけたのは自分の足や本棚かもしれないけど、足を痛めた原因は「私」と言うことで間違い無いだろう。  その結論までたどり着いた瞬間、血の気がサァっと引いてた。私は物凄い勢いで後ろを振り返って、彼を見た。彼はまだ床に座っていて、目には涙が滲んでいた。  その姿に罪悪感を覚えた私は、ゴォっとワックスがかかった床に椅子が擦れる音が図書室に響くくらい、大きく隣の椅子を引いた。その様子を見た彼は。何と表現すればいいかわからない微妙な顔をしていたが、それを無視して声をかける。 「あの、よかったらお隣座りますか?」  このときの私は、満足度100%の作り笑顔だったと思う。この笑顔を見れば、第一印象は完璧だと思えるくらいには、ちゃんとした笑顔だったと思う。  だけど、その前の行動で全て台無しになるだとか、逆にこの笑顔がマイナスになるだとか思ってもみなかった。
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