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彼は未知の生物を見るように、恐る恐ると言った様子で私をみながら隣の椅子に座った。なんか、目を逸らしたら襲われるとでも思っているのでは無いかと思うくらいに私を見ていた。私は猿か?
「どうも、ありがとう・・・?」
疑問符を使いたいのは、私の方だ。彼にイラついたとしてもそれを表に出すことはなく、私は変わらずに笑顔のままに彼に小声で話しかける。
「いいえ。それで質問なんだけど、さっき私に後ろから声をかけたのは君?」
「うん、そうだけど・・・」
言葉少なくそうとだけ答えられ、私の笑顔は限界に近づいていた。私の質問が悪かった、そう自分に言い聞かせて「何で私に、急に、話しかけてきたの?」と質問を重ねた。
すると彼は先ほどまでの釈然としない態度とは変わって、納得したと言うように顔を縦に一度振り顔色を明るくさせた。そして「だって、村田さんが読んだんじゃん」と言った。
「え、私は君を読んで無いし、知り合いじゃ無いし、何で名前を知ってるの? ストーカーなの?」
私は嫌悪の感情を前面に出して、彼との距離を取った。椅子の足が机の足に当たって、「これ以上は無理だよ」って言われるまでは距離を取る。
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