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二年になって、私へのいじめはぱたりと止んだ。
美由紀と同じクラスになったのが大きい。
洗練されたギャル。ラグビー部のマネージャー。
私は自然に彼女と一緒にいることが多くなった。
「美由紀は、どうしてビー部のマネやろうと思ったの?」
「先輩達がカッコよかったから。彼氏は絶対あの中の誰かがいいって思った」
美由紀はビー部のキャプテンと付き合っている。
茶髪でドレッド、岩みたいに大きくて、グラウンドですれ違う時私は絶対に緊張してしまう。
「芽生は? もう決まってるんでしょ」
「何が?」
「とぼけないでよ。引退したら誰と付き合うか」
「誰とも付き合わないよ」
「えー、でも好きな人はいるでしょ」
「いないよ。みんなかっこいいもん」
「出た、女子マネの常套句」
呆れ顔で美由紀は呟いた。
そう。これは女子マネの常套句だ。
男女交際禁止とか関係ない。
特別扱いしている選手はいないと。
そう宣言することが、私の居場所を保証する。
現役中に堂々とキャプテンと付き合う美由紀は、潔いと思う。
好きな人はいるでしょ。
私は自分に問い掛ける。
思い浮かぶのは、いつだって一人。
でも本当に、私は伊坂くんが好きなんだろうか。
陸上部の子が、伊坂くんに告白するのを見たことがある。
すらりと細くて色白の、走り高跳びの子。
「俺、引退するまでは誰とも付き合わないって決めてるから」
断る伊坂くんがびっくりするほど冷たくて、私は引いた。
うち男女交際禁止だからゴメンね、くらい言ってもいいんじゃないかと勝手に憤った。
まるで、私が振られたような気持ちになった。
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