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あと五分、ここにいてくれればいい。
はめ殺しの窓から、かろうじて光が差し込んでいる。
光はそれだけなので薄暗い。コンクリートがむき出しの床は、底冷えのする冷たさだ。
両手足を縛られ、芋虫のように転がされた私は、意を決して口を開く。
「どうすればここから出してくれるんだ」
すっかり掠れて、か細くなった声を投げた先から返ってきたのは「動くな」の一言だった。
状況は絶望的だ。監禁され、手足の自由を奪われた状態で、銃まで突きつけられている。
「あと五分、ここにいてくれればいい。簡単な話さ」
「何が目的なんだ」
「知る必要はない」
「ここはどこだ」
「知る必要はない」
「お前は、お前たちはなんなんだ」
知る必要はない。
何を問いかけても、無機質に跳ね返されるばかりだ。
本当に五分だけでいいのなら、黙って待つべきか?
答えは否だ。
何故なら私はこの五分間を、数えきれないほど繰り返させられているのだから。
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