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幸運を祈るよ、さようならだ。
「ご命令通り、五分ごとに起動するよう設定しました」
部下らしき男の報告を受け、オールバックに髪を撫でつけた男が「そうか」とこちらを向いた。
「君がやってはいけないことだけ伝えておくとしよう。なに、たったふたつだ」
何が目的だ。何者なのだ。何を聞いても答えず、男が指を順に立てる。
帽子こそ被っていないが、二人とも奇妙な仮面をつけている上に、声もボイスチェンジャーで変えているようだった。
「ひとつ。彼に対して、この五分が連続していること、つまりは彼がループしていることを告げてはいけない。ふたつ。彼を無視して、脱出を試みてはいけない。以上だ」
破ればどうなる?
問いかけると、男が合図がわりに肩をすくめてみせた。
部下らしきもう一人の男が何かしらの操作を行い、直後、銃声が響き渡る。
「ご覧の通りだ。今回は試運転だが、この後の本番ではもちろん、君に狙いがつけられているわけだ」
私が言葉をなくすと、男は満足そうにした。
「あと五分、ここにいてくれればいい。簡単な話さ」
銃口をこちらに固定させたロボット……彼が無機質な声を出す。
起動を確認したところで、二人の男は私に背を向け、ロボットの後ろ、出入口のドアへと歩き出した。
「動くな」
身をよじり、後を追おうとした私に、ロボットがすぐさま警告を発した。
「幸運を祈るよ、さようならだ」オールバックの男が満足そうに笑う。部下らしき男は視線を床に落としたままだ
「おい、待て。頼むから待ってくれ」
「動くなと言った」
強い口調に変わったロボットからの警告に、びくりと動きを止めた私を見て、男たちは今度こそ背を向けた。
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