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それから、すぐ戻ると断って、オフィスを後にした。
桐ヶ谷が強い香水を付けていたことを、少しだけ感謝した。少し鼻を凝らせば、あの香水の残り香を見つけることが出来た。
外は強い雨だが、屋内なので雨で匂いが洗い流されることもない。強い香水の匂いは、階下ではなく、階上に続いていた。
匂いを追って階段を上る。
地上4階建ての東岸署は、1階が交通課の、2階に刑事課や生活安全課のオフィスがある。3階は会議室や警察署長の居室があり、4階は格技場になっている。
3階を素通りし、4階の格技場へと上がる。匂いは開きかけたドアの中から漂って来ている。
どぎつい甘い匂いに、かすかに血臭が入り混じって香る。
薄地のシャツの下、体毛がおぞけ立つのを感じながら、瀬畑は生唾を飲み込んだ。
25.
バン! と乱暴に格技場のドアを開け、瀬畑は転がり込むように中へと入った。
広い板の間の真ん中あたりに、ガタイの良い獣人たちが4名。何か、いや、誰かを取り囲むように立っている。
熊族と猫虎族がそれぞれ1人ずつ、それと犬狼族が2人。
下卑た笑い声と罵声に混じり、聞き覚えのある呻き声が聞こえた。
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