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「まったく、父娘ともども無神経極まりないな。ああ、父親の柳昭義はかつて、淡海県警の警務部長を務めたことがあってね。共存派と言えば聞こえが良いかもしれないが、きみやわたしのように獣人におびえる弱者にとっては敵でしかない。引退した今でさえ、あっちこっちでわれわれの暮らしや活動の邪魔をし続けている。心底から君の不運に同情するよ。未来ある若者のキャリアに傷でもついたら一体どうするつもりだ!」
語調を荒げながら一息で言うや、テーブルの上のワインボトルを掴み取る。
そして、乱暴な手つきで自分のワイングラスにどぼどぼと注いだ。
それをぐいっと一息で飲み干す。
数度繰り返すうち、高価で繊細な味と香りの赤ワインは底を尽きた。
蘭堂はウェイターを呼びつけ、同じ銘柄をオーダーしてから桐ヶ谷に向き直り
「きみのために忠告しておくよ。柳小夜子とその取り巻きを信用してはダメだ。ただ、あからさまに逆らったりしてはきみの立場も悪くなるだろうし、表向きだけは従っておいたほうがいいだろう。とにかく、気をつけてくれ。いいね?」
「はい、気をつけます」
テーブルの上に身を乗り出し、口角に泡を飛ばす蘭堂に気圧されるように、桐ヶ谷は頷いた。
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