3.殺人事件と投稿動画

1/6
前へ
/84ページ
次へ

3.殺人事件と投稿動画

6.  桐ヶ谷が刑事課に赴任してから3日目の朝、事件は起きた。  東岸署の管轄地域である東港の近くにある倉庫の敷地内で、人間種男性の遺体が発見された。  遺体は鈍器のようなもので幾度も殴打されたのか、あちこちが内出血を起こし、どす黒く腫れ上がっている。  骨が折れているのか不自然に凹み、ひしゃげた形跡が各所にあった。 「っぷ」  それを目にした桐ヶ谷は、一目散に現場から走り去った。 「ほう。新人の割に心得てるじゃねぇか。いきなりゲロ吐いて現場を汚したどっかの誰かと違って」  自分を見上げながら言う鼠族の鑑識官の言葉に、瀬畑は目を逸らす。 「それ、随分前ですよね」  だが老鑑識官はそれには応じず、ふたたび遺体に目を戻し 「にしても、ひでぇな」 「ええ」  被害者の名は梶浦佳久(かじうら・よしひさ)。市内の高級住宅街に住む会社員の男性だった。  いつもは朝の4時半から5時半にかけての1時間、家の近くの決まったコースをゆっくり走ってから帰宅、その後、6時半に出社するのを日課としている。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加