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笑い声に混じって聞こえていた悲鳴は、空気が漏れるような呻き声に代わり、やがてそれも聞こえなくなると
『おい、これやり過ぎじゃね?』
『でも、出来るだけヒデェ目に遭わせろってのが条件だろ? じゃ、仕方なくね?』
『おーいオッサン、生きてる?』
『さっさと逃げるぞ! お前もいつまでも撮ってンじゃねーよ!』
『なぁ、これで幹部に取り立てて貰えるんだよな』
『しらねーよ!』
それを最後に動画は途切れた。
「あ、それなら、ぼくも見ま、っぷ」
胃の中身を生け垣の間にひっくり返し、多少すっきりして戻ってきた桐ヶ谷はしかし、再び催してきたのか口元を押さえた。
「おう、吐くンならあっち行け」
鑑識官は長い尻尾で、色とりどりのタイルで舗装された地面をぴしぴしと叩きながら、吐き気を訴える桐ヶ谷を追い立てるが、今度は間に合わない。
「や、っぱり、獣人は、や、野蛮んおぇぇええぇぇぇぇ」
「馬鹿野郎! 現場を汚すんじゃねぇ!」
びしゃびしゃとその場に胃液を漏らす桐ヶ谷を、鑑識官が怒鳴りつけた。
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