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邪魔な連中を内部から崩してやろう。完全に瓦解させるのは無理にしても、時間稼ぎにはなる筈だ。通信端末をたぐり寄せて画面を点灯させる。
「仕方ない。必要な犠牲なんだ。仕方がない」
蘭堂はぶつぶつと自分の言い聞かせながら、メールアプリを起動させた。
23.
門をくぐり、路駐した車に乗り込んでから、瀬畑は業務用の端末を立ち上げた。時刻は夜7時に近い。
刑事課長の柳には、遅くなる旨を伝えてあった。改めて状況報告のために電話を掛けるも、呼び出し音ばかりで出る様子はない。確か、午後から会議があるとは言っていたが、それも午後3時くらいには終わっている筈だ。
途中にコンビニで買ったチョコレート菓子を口の中に放りながら、ルームミラー越しに蘭堂の家を見る。
高い塀の中には大きく葉を茂らせた木々があり、母屋から少し離れた場所に事務所を兼ねた離れがある。
離れは小さかったが、それでもさすがにドア越しに蘭堂本人の匂いを嗅ぐことは叶わなかった。
それでも、屋内から漂う、アトマイザーを丸ごと床にぶち撒けたかのように強烈な香水の香りは、瀬畑でなくとも分かるほどに強烈だった。
「やっぱり、何か隠したいモノでもあるのかね」
誰に言うでもなく呟いてからチョコレート菓子をさらにひとつ口に放り、瀬畑は車を発進させた。
空からは予報よりも早く、ぽつぽつと雨が降り出してきた。
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