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「ギャンギャンうるせぇなぁ」
先ほど桐ヶ谷を足蹴にした熊族──一行の中では一番大柄で、身長183センチの瀬畑より頭ひとつぶんは大きい──が、瀬畑の胸ぐらを掴んで持ち上げる。
掴まれた衝撃でシャツのボタンがはじけ飛び、パラパラと音を立てて床に転がった。
「やれよ。こっちもきっちりやり返すけどな」
瀬畑は口の端から涎を垂らしながらも、歯を剥き出しにして不敵な笑みを浮かべる。
毛皮がクッションになってか、首元で持ち上げられているのに息はそれほど苦しくない。
「っぶ!」
「ハ! テメェひとりで何が出来るってんだ!」
鳩尾に重い一撃を食らい、瀬畑は呻いた。
「なぁ知ってるか? ここの道場、カメラ付いてるんだ」
自分に注意を引きつけさせようとわざと大きな声で言う。だが、桐ヶ谷は倒れたまま、ぴくりとも動こうとはしない。
「それくらい知ってるぜ? さっき壊れちまったみたいだけどな!」
熊族の男が下卑た笑い声を上げ、瀬畑の身体を板張りの床に、背中から思い切り叩きつけた。
とっさに受け身を取り、頭を強打することは防いだが、背中の激痛に苦悶の声を漏らした。
「がはっ!」
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